低抵抗の測定(校正)について

抵抗の測定には、一般的にディジタルマルチメータや抵抗計が使用されています。測定原理としては、未知の抵抗(Rx)に既知の電流(I)を流してその電圧降下(E)を測定し、オームの法則(Rx=E/I)から抵抗値を算出します。

測定方法には主に2端子法と4端子法があります。2端子法は、抵抗とディジタルマルチメータを測定ケーブルで接続し測定を行います。しかしながら、ディジタルマルチメータは測定端子間における抵抗を測定する設計のため、接続された測定ケーブルの抵抗値まで含まれて測定されてしまいます。そのため、低抵抗を正確に測定する場合には不向きです。

4端子法では、抵抗にディジタルマルチメータから4本の測定ケーブルを接続します。2本の測定ケーブルから抵抗に既知の電流を流し(ディジタルマルチメータから電流出力)、残り2本の測定ケーブルで測定対象の抵抗両端の電圧降下を測定し、オームの法則から抵抗値を算出します。4端子法は、電圧測定により抵抗を求めるため、接続された測定ケーブルの抵抗値は含まれないことから、正確な抵抗測定を行うことができます。

図1             図2 4端子法

      図1 2端子法                             図2 4端子法

 

次に抵抗を測定するディジタルマルチメータ(標準器)の測定(校正)について考えてみます。ディジタルマルチメータの抵抗レンジの測定(校正)を行う場合、標準抵抗器やダイヤル形抵抗器、又はキャリブレータ等を使用して行います。高精度な測定(校正)には標準抵抗器が適していますが、1×10のべき乗(Ω)の定格が主流となっており、例えば200(mΩ)など1×10のべき乗(Ω)以外の測定(校正)を行う場合には適しておらず、また、様々な公称値の標準抵抗器を用意するのは現実的ではないことから、ダイヤル形抵抗器やキャリブレータを用いて測定することが一般的です。ただし、ダイヤル形抵抗器やキャリブレータにおいても、設定分解能等の影響から100(mΩ)未満の低抵抗の測定(校正)には不向きとなっております。

そこで、任意の低抵抗を精度よく測定(校正)する一つの方法として、4端子法を応用した方法があります。それは、抵抗に電流を通電して発生した電圧降下をケルビン・バーレー回路を活用して分圧し、ディジタルマルチメータ(抵抗レンジ)の電圧端子側に接続します。これにより入力電圧を可変することで疑似的にディジタルマルチメータに低抵抗を表示させることが可能となり、オームの法則から任意の抵抗値の測定(校正)が可能になります。

図3

      図3 ケルビン・バーレー回路図  

 

 

(2024.07 T)

 

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