放射温度計について

新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延以降、飲食店や小売店の入り口には検温用の放射温度計やサーモグラフィが設置され、放射温度計は一般の方々にも馴染みのある計測器となりました。一般的な放射温度計は、測定対象物から放出される赤外線強度を測定し、温度を計算して表示します。測定する赤外線は、測定対象によって適当な波長が選択されますが、店頭に設置されて体温近傍の温度を測定する放射温度計で多く使われる波長は8 µm~14 µmで、この領域は遠赤外線と呼ばれています。また、従来から鉄鋼業などで使用される放射温度計は、波長0.9 µm近傍の近赤外線と呼ばれる領域が選択されることが多いです。

放射温度計は、非接触で衛生的に温度を測定でき、安価な製品も市販されるようになったため、一般の家庭にも広く普及してきました。しかしながら、それと同時に、必ずしも正確とは言えない情報も散見されるようになってきました。例えば、放射温度計は測定対象物の表面の温度を測定しますが、対象内部の温度が測定できると誤認されていたり、測定位置を示すために放射温度計が発するレーザーマーカーが温度を感知するために使われていると誤認されていたりもします。

放射温度計の使い方についても注意が必要です。例えば、放射温度計の仕様に規定される測定視野より小さい測対象物は正しく温度測定ができません。また、測定対象物によって適切な放射率設定を行わないと、正しい測定結果が得られません。弊所の計測技術セミナーでは放射温度計等の正しい使い方を紹介する講座もありますので、ご興味のある方は是非ご参加ください。

使用されている放射温度計をはじめ、計測器には総じて誤差があり、また、使用頻度や使用状況によって、その誤差も変化していきます。そのため、正しい温度計測を行うためには定期的な校正が必要となります。

弊所では、400 ℃~2000 ℃の範囲における放射温度計のJCSS校正に加えて、2024年1月から-40 ℃~500 ℃の範囲のJAB校正を開始しました。使用されている放射温度計の正しい値を確認したい場合などには、是非お問い合わせください。

 

(2024.6 K)

 

※JAB校正

JAB校正とは、公益財団法人 日本適合性認定協会(以下、JAB)により、国際規格「ISO/IEC 17025(試験及び校正機関の能力に関する一般要求事項)」に適合している校正機関として認定された当所が行う校正のことを指します。

 

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