数値の丸め方について

1 はじめに

パソコンの普及により、かつて手作業で行っていた計算作業が自動化され、私たちの日常的な計算方法も大きく変わりました。

大量のデータを伴う金融計算や科学的な解析などがこれまでより身近になりました。このような計算処理においては、数値を目的の桁数(2024年10月のテクニカルコラム「測定結果などを表す数字の有効数字について」を参照してください。)で表すために行う切り上げ、切り捨て、四捨五入(以下、「丸め」という)の処理が計算結果に大きな影響を与えることがあります。誤った丸め方をすると、最終的な結論や意思決定に大きな違いを生じる可能性があるため、用途に応じた適切な丸め方を選ぶことが非常に重要です。数値の丸め方にはいくつかの手法があり、その中でも代表的な手法として「四捨五入」と「偶数丸め」を紹介します。

なお、コンピュータや使用するソフトウェアは無限の桁数で計算をするわけではありませんので、桁数が有限であることによる誤差は別途把握しておく必要があります。

 

2 四捨五入と偶数丸め

2-1 四捨五入

四捨五入は、数値を最も近い整数や指定された桁に丸める最も一般的な方法です。この方法では、0.5以上の場合は「切り上げ」、それ未満の場合は「切り捨て」というルールが適用されます。日常的な計算や金銭計算において、直感的に理解できるため、非常に便利です。

  • 3.4 → 3(切り捨て)
  • 4.5 → 5(切り上げ)
  • 5.6 → 6(切り上げ)
  • 6.4 → 6(切り捨て)

 

2-2 偶数丸め

日本産業規格(JIS Z 8401:2019)では、十進法の数値の丸め方について規定してあり、特に0.5の場合、最寄りの偶数に丸めるというルールが特徴です。例えば、一の位が奇数なら「切り上げ」、偶数なら「切り捨て」といった具合です。

四捨五入の場合、丸めたい桁の数字が1~9で均等な確率で現れるとすると、真ん中の”5″を常に切り上げてしまうと、少しずつ数値が大きくなってしまいますが、偶数丸めでは、一つ上の桁が奇数なら切り上げ、偶数なら切り捨てが決まり、その確率は1/2なので丸めによって数値が大きくなりにくいと考えられています。もちろん、本来丸めは一度で行われるべきですが、すでに数値が最小桁で丸められているような場合は、このような処置が必要になります。

したがって、この方法は、誤差の偏りを最小限に抑え、計算結果の精度が維持できるように設計されているわけです。

  • 3.5 → 4(3は奇数なので切り上げ)
  • 4.5 → 4(4は偶数なので切り捨て)
  • 5.5 → 6(5は奇数なので切り上げ)
  • 6.5 → 6(6は偶数なので切り捨て)

 

2-3 四捨五入と偶数丸めの比較

丸めの幅 与えられた数値 四捨五入 偶数丸め
0.1 12.25 12.3 12.2
0.1 12.35 12.4 12.4
10 1225.0 1230 1220
10 1235.0 1240 1240

注意:丸め処理を2回以上使うと誤差の要因になります。例えば、偶数丸めの場合、12.251を12.25にしたのち、12.2としてはいけません。

 

3 まとめ

数値の丸め方は、計算結果に大きな影響を与えるため、慎重に選ぶことが求められます。四捨五入は日常的な計算で便利で使いやすいですが、精密な計算が必要な場合や、大量のデータを扱う際には偶数丸めを使用することで、誤差の偏りを最小限に抑えることができます。計算を行う目的に合った丸め方を選ぶことが、正確な結果を得るために欠かせないステップです。

 

 

(2025.04 K)

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